目次
ニキビがしこりになる過程
アクネ菌が増殖して炎症が起こる
しこりのある赤ニキビは、アクネ菌が毛穴に詰まった皮脂の内側で繁殖してできます。アクネ菌が繁殖しているために炎症が起こって赤くなっており、炎症が起こると膿が溜まりしこりのように固まってしまいます。色味が赤ではなく紫色に近い場合は、さらに症状が悪化したため膿に血液が混ざった状態です。
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大きいニキビの原因と治療法。しこりと痛みを解消して重症化を防ぐ
白血球が死んで膿が溜まる
アクネ菌が活発に活動すると白血球はアクネ菌を退治するために戦います。戦いに敗れた白血球の死骸は膿になり毛穴の奥に溜まり膿疱となります。肌組織の奥底や毛穴以外の細胞まで蝕んでいくアクネ菌によって炎症を起こし赤ニキビになり、さらに炎症が進むと黄ニキビになります。
炎症が毛穴にまで広がる
しこりニキビが厄介なのはアクネ菌による炎症が毛穴まで広がることです。毛穴の奥で炎症が進んでいることで、表面からのケアが届きにくいのです。そのため、しこりニキビは長期化してしまうことが多いです。
コラーゲンが過剰に生成される
しこりニキビが慢性化して炎症が長引くことで肌の防衛反応がおき、コラーゲンが過剰に生産されます。それがしこりになり盛り上がって肌に残ってしまいます。この状態を膿腫や硬結といいます。しこりによって肌が凸凹になる可能性もあります。コラーゲンによるしこりはニキビ跡の中でも一番ひどい状況と言ってもよいかもしれません。
硬結(しこり)ニキビの特徴点
治りにくく慢性化しやすい
しこりニキビは毛穴の奥で炎症を起すので、表面からのケアが届きにくく治りにくいのですが、しこりニキビの症状がひどいという時はニキビが慢性化していることが多いです。慢性化の原因の一つにニキビを潰してしまうことがあります。しこりニキビは潰してもすぐ再発するので「繰り返すだけで治らない」というのが特徴です。ニキビは潰すと跡が残ってしまうので、潰すことは絶対やめましょう。
背中や顎口周りにできやすい
背中や顎口周りはしこりニキビができやすい場所です。ニキビが出来た時はあまり触らない方がいいということはよく知られていますが、背中は洋服が常に触れていたり、日差しが当たっていたり、また、髪の毛が触れていたりとニキビに接触することが多いです。顎口周りもつい触ってしまうことが多いです。これらの刺激は皮脂腺を過剰に刺激し皮脂が過剰分泌されニキビを作ります。背中は顔に比べると洗いにくくケアもしにくいのでニキビが悪化しやすいです。顎口周りもつい触ってしまいがちですが、手が清潔でなかったり汗などの汚れでもニキビの原因になりますので気を付けることが大切です。
ニキビ跡が残りやすい
しこりニキビはニキビ跡が残りやすい厄介なニキビです。毛穴の奥で膿が溜まり、しこりになるため、真皮や皮下組織にまでダメージを受けます。肌は再生しようと過剰反応しコラーゲンの元になる細胞を過剰生産します。それが盛り上がりニキビ跡として残ります。
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ニキビ跡にはどうしてしこりができる?ニキビ跡に悩まない肌へ
しこりニキビと間違えやすい皮膚疾患
毛嚢が炎症を起こす毛嚢炎へ
しこりニキビと似ている皮膚疾患が毛嚢炎です。毛嚢炎は皮膚常在菌である表皮ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が毛穴に感染して起こります。白ニキビのように中央に膿がみられることもありますが多くの場合、何も治療をしなくてもニキビより早く治ります。皮膚の浅い部分で炎症を起こした場合は一週間ほどで跡も残らず綺麗に治ることがほとんどです。
まれに化膿して腫れが進行してしまう場合があり、「おでき」や「せつ」といわれる極端に腫れてしこりのようになることがあります。化膿した場合は炎症跡もひどくなることもありますし、場合によってはケロイドになってしまうことも考えられます。そのため毛嚢炎が化膿した場合は早めに皮膚科を受診して治療することが大切です。
良性腫瘍の粉瘤
しこりニキビと似たものに粉瘤があります。粉瘤は粉瘤腫やアテロームなどとも呼ばれている良性腫瘍です。皮膚の内部に袋状の嚢腫が出来て皮膚の表面が盛り上がり、炎症を起こすと腫れて痛みがあります。顔に出来た場合、ニキビに似ているのでニキビ用の薬やスキンケア用品を使ってしまいますが、全く効果がありません。粉瘤そのものは良性の腫瘍なのですが、放置して悪化した場合に腹膜炎・リンパ管炎など他の病気を引き起こしてしまう危険もあるので注意が必要です。
粉瘤とニキビの見分け方ですが、粉瘤の場合、皮膚の表面に「開口部」と呼ばれる穴がありますが多くは固まった老廃物などで塞がっていて、表面から見ると黒い点が見えます。この黒い点の有無が、ニキビと粉瘤を見分けるひとつのポイントになります。粉瘤はセルフケアだけで完治できません。外科手術によって袋状の嚢腫を摘出しなければ、何度でも再発します。粉瘤が疑われる場合は早めに皮膚科を受診しましょう。
しこりニキビを悪化させてしまうこと
膿を強い力で潰す
しこりニキビを潰すとそこから雑菌が入り炎症がますます広がり進行します。自分でニキビ跡を作り、色素沈着させるようなものです。どんなに気になっても潰すことだけは絶対やめてください。根気強くケアを継続することがしこりニキビでは効果的です。
メイクの厚塗りで隠す
しこりニキビを隠すためにメイクの厚塗りをする方がいますが、ニキビやニキビ跡を悪化させてしまっては意味がありません。特にコンシーラーを使って隠しているとしこりニキビを悪化させることにあります。コンシーラーはニキビを隠すことは確かに可能ですが、油分が多いためアクネ菌の餌になり、活動を活発化させニキビを悪化させてしまいます。ですから、ファンデーションの上からコンシーラーを塗って、さらにファンデーションを重ねるという厚塗りはニキビを悪化させるのでやめましょう。
どうしてもコンシーラーでニキビを隠したい場合はニキビ用の薬用コンシーラーを使用してください。この時に注意してほしいのはファンデーションの前にコンシーラーを塗ることです。先に薬用のコンシーラーを塗ることにより、保護膜ができ、ファンデーションを塗っても油分が皮膚と触れるのを防いでくれます。
何度も洗って皮脂を落とす
しこりニキビの治療には肌を清潔に保つことが大切です。しかし、何度も洗えば良いというわけではありません。余分な皮脂や汚れを落とすだけでいいのです。何度も洗うことで必要な皮脂まで失ってしまい、肌が乾燥状態になると皮脂が余計に分泌されることになります。皮脂が余計に分泌されることでニキビが悪化しますし、新しいニキビができやすくなります。
無防備な状態で紫外線に当たる
紫外線は活性酸素を発生させます。活性酸素は肌の細胞を攻撃するので肌が弱くなり、将来的にはシミ、しわ、たるみなどの原因になるほか、ニキビの炎症や悪化を引き起こす原因となります。
紫外線は肌の角質にダメージを与え細菌や外部の刺激から肌を守ってくれるバリア機能を崩壊させます。バリア機能が崩壊すると直接刺激が肌の奥まで届くのでニキビが悪化し、肌が外部の刺激を受けやすくなったり肌の表面の潤いが失われると乾燥肌になります。すると肌はバリア機能を復活させるために皮脂を過剰分泌し、毛穴の詰まりを起こします。バリア機能を維持するために角質を厚くするので、厚すぎる角質も毛穴を塞いでしまい、やはりニキビの原因となります。
しこりを伴うニキビの皮膚科での治療法
しこりにステロイドを注入
しこりニキビやしこりニキビ跡はコラーゲンなどが過剰に生成されている状態なのでこれを軽減するために「ケナコルト」という長時間作用型のステロイド剤を注射器で注入する治療方法です。比較的新しいしこりで赤く盛り上がっている場合は効果的です。
ただし、注入量によって凹みや血管拡張が起こるリスクもあります。
リザベン(抗アレルギー剤)内服
ステロイド注入と併用してリザベンの内服を勧められることもあります。リザベンには、弱いですが肌の細胞を正常な組織に変えていく効果が認められています。ステロイド注入と併用は効果的でしょう。
皮脂を溶かすレーザー治療
しこりニキビの治療で炭酸ガス(CO2)レーザー治療があります。周囲の正常組織にダメージを与えずに皮膚に穴をあけることで皮膚の深いところに溜まった膿を排出させます。毛穴に詰まった膿や余分な皮脂を溶かすとともに殺菌効果がありますので膿や皮脂が排出した後は早期に炎症が治まりニキビが治っていきます。このレーザーで開けた穴は、1〜2日のうちに塞がり傷も残りません。
皮膚を柔らかくするケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗り、皮膚の表面から真皮にかけて瞬時にダメージを与える治療法です。しこりニキビのケミカルピーリングは、トリクロロ酢酸などの深く効く酸を使用して行います。治療は手軽ですが深いかさぶたになり、剥がれた後も数週間赤くなることがありますので、治療後の回復期間などもお医者様とよく相談して行ってください。
重症の場合は切開して排膿
しこりニキビの症状が重いときは切開して膿を出す治療もあります。腫れが重症化したニキビは肌の深い部分に膿が溜まっているので、皮膚をわずかに切開して排膿することで早く治ることもあります。ただし、若干、線上の傷跡が残る欠点があります。
今後のしこりニキビの予防方法
睡眠は最低でも6時間とる
肌は寝ている時にもっとも再生されています。睡眠時間が短くなると、肌が生まれ変わる時間がどんどん遅れ、肌荒れが進行します。肌荒れが進むとニキビができやすい肌になります。睡眠時間は蓄積しておくことができません。毎日の睡眠時間の確保が良い肌作りにつながるのです。肌の再生を正常に機能させるためには最低6時間の睡眠が必要と言われています。
食事はバランスを気にして3食きちんと摂る
食事は3食きちんととり、栄養のバランスを考えて食べるようにしてください。しこりニキビの炎症を軽くしたりしこりニキビを悪化させないために食べ物や飲み物の種類にも気をつけたいものです。
炎症を抑える食べ物としてビタミンEやビタミンCなどが豊富に含まれている、トマト、豚肉、バナナなどがおすすめです。 また、身体に老廃物を溜めないために食物繊維豊富なゴボウ、白菜、海藻類、乳酸菌を増やして腸内環境を整えるヨーグルトや、乳酸菌発酵のお漬物などもいいでしょう。
不足しがちな栄養素はサプリメントで
しこりニキビの改善には栄養バランスが大切です。不足しがちな栄養素はサプリメントで補いましょう。しこりニキビの改善にはビタミンC、ビタミンB2、ビタミンB6のような栄養素が効果的です。ビタミンCには皮脂の過剰分泌を抑える働きがありますし肌の老化も防ぐ作用があります。ビタミンB2も皮脂の過剰分泌を抑えお肌を正常で健康な状態で維持する効果があります。ビタミンB6は肌の健康を保つ働きがあり、お肌や粘膜の健康を維持することができます。また、ミネラルのサプリメントも有効です。亜鉛、カルシウム、マグネシウム、セレン、鉄分、銅、マンガンなどが代位標的ですが、これらのミネラルは肌の再生に必要なものであり、かつ活性酸素の除去を助けるものです。ビタミンもミネラルも体内に蓄積することはできません。毎日必要な量を摂ることをおすすめします。
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体を動かして運動不足を解消する
しこりニキビの改善にはホルモンバランスを整えることも必要です。身体を動かすことで自律神経が整い、ホルモンバランスも整います。運動不足は血行不良やむくみや冷えを引き起こしますし、体を動かさず、頭だけを使っていると不眠になりやすくなることも。睡眠不足は肌荒れに繋がりますので適度な運動を日々行うことが大切です。
ニキビに負けない健康的な体を作ろう
しこりニキビの対策には適切な治療を受けることが大切ですが、一番大切なことは健やかな肌作りではないでしょうか。そのためには、バランスの良い食事、たっぷりの睡眠、適度な運動を毎日の生活に取り入れていくことです。そのうえで、不足した栄養素をサプリメントで補ったり、ニキビ専用コスメを使ったりすることの効果も出てくると思います。特に偏食傾向の方や、外食が多い方、仕事が忙しく運動不足になりがちな方は少しだけ心がけてみることで大きな改善がみられるかもしれません。
また、ニキビの予防・対策に良いとされる生活方法はお肌にだけでなく身体にも優しい生活です。無理のない範囲から生活に取り入れニキビに負けない健康な体を作りましょう。