目次
代表的な女性ホルモン
2つの女性ホルモン
「女性ホルモン」は正式なホルモンの名前ではなく、2つのホルモンを合わせた総称です。
「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」があります。生理周期やストレス、体調などによってそのバランスは変わり、このバランスが取れていることで正常な機能を果たします。
女性ホルモンは女性の身体や心の健康、妊娠に備えた身体づくり、美肌の維持に欠かせない重要な役割を担っています。
▼さらに詳しい解説はこちら
エストロゲン・プロゲステロンのことを知って、女性ホルモンを整えよう
卵胞ホルモンであるエストロゲン
エストロゲンは、月経後から排卵前にかけて多く分泌されます。エストロゲンが優位になっている状態を「卵胞期」ということから、「卵胞ホルモン」ともいわれます。
エストロゲンは妊娠に備える大きな役割があります。具体的には、卵胞を成熟させて受精卵が着床しやすいよう子宮の内膜を厚くします。この仕組みによって女性は妊娠できるのです。
それだけでなく、エストロゲンは自律神経を正常に保ったり、肌をきれいにしたりと、さまざまな働きをしてくれています。
黄体ホルモンであるプロゲステロン
プロゲステロンは、排卵後から生理までの期間に多く分泌されます。排卵時に卵胞から出る卵子が黄体化することでプロゲステロンが分泌されることから、「黄体ホルモン」ともいいます。
着床した子宮のサポートをし、妊娠を継続させてくれる役割があります。たとえば、子宮内膜を厚くふわふわにしてくれたり、産後の授乳に備え乳腺を発達させます。
そのほか、妊娠後の胎盤の状態を安定させてくれたり、基礎体温を上げる働きもします。
このプロゲステロンが増加することで、身体は水分を溜め込んだり皮脂分泌が盛んになったりします。生理前にむくんだりニキビができやすいのはこのためです。
女性ホルモンの分泌場所
女性ホルモンは卵巣から分泌されますが、その分泌量は「脳」がコントロールしています。
脳にある視床下部から命令を受けて、下垂体から性腺刺激ホルモンというものが分泌されます。その性腺刺激ホルモンが卵巣に届くことで、女性ホルモンが分泌される仕組みです。
視床下部は、自律神経のコントロールや体温、食欲など身体のあらゆる機能をコントロールする重要な器官です。
エストロゲンの働き
女性らしさを作る
エストロゲンは、別名「美容ホルモン」といわれるほど女性にうれしい効果をもたらします。
たとえば、バストを大きくしたりくびれを作ったりと女性らしい曲線的な身体ラインを作る働きです。思春期の時期に大きく身体が変わるのは、第二次性徴期を迎えたこの頃に急激にエストロゲンが分泌されるためです。
さらに、コラーゲンを生成する働きもあります。お肌の潤いを保ち、きめ細かい美肌をキープするのにも欠かせないホルモンです。
▼さらに詳しい解説はこちら
エストロゲンの作用。ホルモンの増減による体の変調や、妊娠について
自律神経を整えてくれる
エストロゲンを作り出す視床下部と下垂体は、自律神経をコントロールする部分でもあります。エストロゲンは、自律神経を安定させてくれる効果をもたらします。
自律神経は身体のあらゆる機能・器官の正常を保つ重要な神経ですが、女性ホルモンと深く結びついて相互関係にあります。
たとえば、エストロゲンが活発に分泌されると、身体をリラックスさせる「副交感神経」が優位となり、プロゲステロンが多くなると今度は身体を活発にさせる「交感神経」が優位となります。
女性ホルモンと同じようにどちらかに偏りすぎても不調となってしまうのですが、ストレスなどによって交感神経に傾きやすい傾向にあるため、エストロゲンが副交感神経を優位にしてバランスを保ってくれるのです。
▼さらに詳しい解説はこちら
エストロゲンを増やす。「更年期対策」心身ともに元気に過ごす方法
骨や血管の病を防ぐ
エストロゲンは、動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞の原因となる悪玉コレステロールの増加を防ぎ、善玉コレステロールを増やします。血管を拡張し流れを良くする働きもあるため、血管が詰まってしまうのを防いでくれます。
また、エストロゲンには骨を丈夫にする働きもあります。骨を破壊する細胞の働きを抑制したり、カルシウムの吸収を助け、骨密度を高めてくれます。骨粗しょう症などを防ぎます。
生理周期を安定させる
エストロゲンは、卵胞を成熟させて子宮内膜を厚くさせ、妊娠に備える働きがあり、生理周期にも大きく関わっています。
生理は、子宮内膜に受精卵が着床しなかった場合に起こりますが、そもそもエストロゲンが正常に働いていなければ子宮内膜は厚くなりません。エストロゲンのバランスが取れていてはじめて生理周期が安定するというわけなのです。
男性にも作用する
男性の体内にも女性ホルモンは分泌されています。
男性の場合は、エストロゲンが「副腎」という肝臓と腎臓の近くにある部分から分泌されます。女性に比べると分泌量はごくわずかです。しかし、このごくわずかのエストロゲンが身体にとって良い影響をもたらしてくれるのです。たとえば、骨を丈夫にしたり、悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やすことから、生活習慣病の予防やアルツハイマーの予防にも効果があります。
プロゲステロンの働き
妊娠に必要な準備をする
プロゲステロンは妊娠に必要な準備をしてくれるホルモンです。
基礎体温を上げ、血行を良くして受精卵を子宮内膜に着床させやすくします。ここで受精卵が着床すると、さらに子宮内膜を厚くふわふわのベッドのような状態にし、妊娠を継続させてくれます。着床がなかった場合には、プロゲステロンは減少して子宮内膜は剥がれ落ち、生理が起こるという仕組みです。
また、プロゲステロンは妊娠した場合の授乳に備えて乳腺を発達させます。生理前になると胸が張る方も多いかと思いますが、それはこのプロゲステロンが多く分泌されているためです。
ブスホルモンと呼ばれる役割
プロゲステロンが増加すると、身体が水分を溜め込んでむくみとなったり、皮脂量が増えて肌荒れが起こったり、メラニンも増加するのでお肌がくすんだり…とさまざまなトラブルが起こりやすくなります。
しかし、プロゲステロンも女性の身体のために働いてくれている大事なホルモンです。減ってしまうとホルモンバランスは乱れ、生理不順や妊娠の準備もできなくなってしまいます。このプロゲステロンが多く分泌される時期には、いつもより少し多めに汗をかいてみたり、脂っこいものを控えるなどの対処法でうまく乗り切りましょう。
精神バランスを不安定にする
プロゲステロンの分泌が優位になると、精神バランスは不安定な状態となり、イライラしやすくなったり落ち込んだりします。プロゲステロンによって、頭痛やだるさなどが起こりますが、それが間接的な原因となってイライラし、不安定になってしまうといったこともあります。
生理前にこのような症状に悩まされる方も多いかと思いますが、いわゆる「PMS」という症状のひとつで、病気ではなくプロゲステロンによるものなのです。
女性ホルモンの周期
エストロゲンが増加する卵胞期
生理が終わってからの1週間の間を「卵胞期」といいます。
脳の視床下部が下垂体に対して、卵巣を刺激する「性腺刺激ホルモン」を分泌するよう命令をだします。すると、卵巣の中で卵胞が徐々に成熟していき、エストロゲンが増加します。生理で剥がれ落ちた子宮内膜もだんだん厚くなっていき、着床の準備をはじめていきます。
この時期はまだ基礎体温はそれほど高くはなく、食欲や体調、精神的にも安定しやすい時期です。
プロゲステロンが分泌されはじめる排卵期
生理終了後から2週間、次の生理まで2週間とちょうど真ん中にあたる時期がこの「排卵期」です。
卵巣の中で卵胞が成熟し、エストロゲンの分泌がピークになるとともに、プロゲステロンが分泌され始めます。これにより排卵が起こることでエストロゲンが減少していきます。
体調に大きな変化はありませんが、この時期から徐々にむくみや腹痛が起こりやすくなってきます。人によっては、「排卵痛」といって排卵時に腹痛があったりします。
プロゲステロンが増加する黄体期
生理前の1週間がこの「黄体期」にあたります。
排卵が終わると、卵胞は「黄体化」し、プロゲステロンが活発に分泌されはじめます。プロゲステロンが子宮内膜をふわふわとさらに柔らかくし、着床の準備を始めます。着床しやすいよう、血行が良くなり基礎体温も上がります。
プロゲステロンの増加により、むくみや便秘、胸の張り、腹痛、肩こり、眠気などが起こりやすくなります。
女性ホルモンが減少する月経期
生理期間中の1週間です。
妊娠がなかった場合は、エストロゲンとプロゲステロン、どちらも減少していき、子宮内膜が剥がれて生理となります。妊娠した場合にはどちらも分泌量が増え、本格的に妊娠維持への準備を始めます。
出血による貧血や、体温を上げるプロゲステロンが減少するため、体温が下がり血行が悪くなったりむくみやすい時期です。
ホルモンバランスが崩れる原因
過剰なストレス
女性ホルモはン卵巣から分泌されますが、そのコントロールをしているのは脳の視床下部です。その視床下部はストレスの影響を受けやすく、負担がかかると卵巣に通常の指令が出せなくなり、女性ホルモンもうまく分泌されなくなってしまいます。
女性は特に、ストレスによって女性ホルモンのバランスを崩しやすいといわれています。
不規則な生活習慣
不規則な生活習慣、食事は当然身体にも大きな負担となってしまいます。
たとえば、ダイエット中の方に多いのがお肉を避けることです。女性ホルモンが生成されるには、タンパク質が欠かせません。赤身のような脂肪分が少ない無いお肉であれば脂肪を燃焼してくれるので、お肉もバランスよく取り入れましょう。
また、コンビニ食やお惣菜、外食は化学調味料が添加されていることが多く、消化器官に大きなエネルギーを要し身体に負担となってしまいます。手軽で便利ですが、それに偏らずなるべく自炊して栄養を調節するよう心がけましょう。
冷えなどの血行不良
身体が冷えて血の流れが悪くなると、卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの分泌もうまくいかなくなってしまいます。冷たい飲み物や薄着は避け、入浴もシャワーだけでなく、しっかり湯船に浸かるようにしましょう。
卵巣に疾患がある
女性ホルモンを分泌する卵巣がうまく機能しないなどの疾患があると、それは当然ホルモンが上手に分泌されなくなる原因となってしまいます。
卵巣の機能が上手くいかなくなる原因としてさまざまなものが考えられますが、無理なダイエットや精神的ストレス、不規則な生活です。こうした原因から近年、若い女性にも卵巣の疾患は多く見られます。
しかし、卵巣の疾患は気付きにくく、生理不順などの目に見える不調があって初めて気付く場合も。見えない部分なのでなかなか難しいかとは思いますが、自身の大切な身体ですので、気にかけてあげてストレスを溜め込みすぎないようにしてあげるなどしましょう。
バランスが崩れると疾患に繋がる
乳がんの大きな原因のひとつに、「エストロゲン」の過剰分泌が挙げられます。
エストロゲンには、授乳に備えるため乳腺を発達させる働きがあります。しかし、バランスが崩れることでその機能が強くなってしまい、かえって乳腺を刺激する原因となります。その刺激によって悪性腫瘍、つまり「乳がん」となってしまうのです。乳がんの原因の約90%が女性ホルモンのバランスが崩れることいわれています。
ホルモンバランスを整える
質の高い睡眠をとる
睡眠中には、女性ホルモンを始めさまざまなホルモンが生成されています。たとえ睡眠時間が確保できていても、重要なのはその「質」であり、眠りが浅かったり夜更かししてお昼ごろまで寝ていたりするのは充分な睡眠とはいえません。
女性ホルモンは22時~2時の間、さらに眠り始めてから3時間の間に多く分泌されるといわれています。この時間はせめて熟睡できるように環境を整えてあげましょう。
▼さらに詳しい解説はこちら
安眠のツボ押しと不眠解消の生活習慣を身に付けてスッキリ目覚めよう
リラックスする時間をとる
熟睡するにもストレスを軽減するにも、リラックスすることはとても重要です。
アロマをたいたり、のんびり散歩したり、読書したり、自分なりの方法で1日のうち少しでもリラックスでいる時間をとりましょう。アロマは、女性ホルモンを整える働きを持つゼラニウムやイランイラン、リラックス効果の高いラベンダーやスイートオレンジなどがおすすめです。
また、パソコンやテレビ、スマートフォンの画面から出ているブルーライトには興奮作用があるので、就寝1時間前からは避けるようにしましょう。
サプリメントや漢方を使用する
ホルモンバランスを整えるには、質の良いバランスのとれた食事が不可欠ですが、3食のうちだけではどうしても不足してしまいがちな栄養素もあるかと思います。そんなときはサプリメントや漢方を活用することもおすすめです。
たとえば、「ザクロ」が含まれたサプリメントです。ザクロには、「エストロン」という、エストロゲンの一種である女性ホルモンが含まれています。これだけでも体内で女性ホルモンの働きをするのですが、さらにエストロゲンも活性化させる働きがあります。また、同じくザクロに含まれる「ビタミンB6」にも、女性ホルモンの分泌を促す効果があります。
漢方は、体質自体を改善するものなので、ある程度長期的に飲んでいく必要があります。それぞれ体質に合ったものを飲むことが大事です。漢方薬局などで専門のお医者さんに相談することが、改善への近道です。
イソフラボンを摂取する
イソフラボンには、エストロゲンに似た性質を持ちます。納豆や豆乳、豆腐、きな粉などの大豆製品に多く含まれています。ただ、摂りすぎるとかえってエストロゲンが過剰となり、ホルモンバランスが崩れて月経不順や乳腺を刺激してしまうなどの不調につながります。
1日の摂取目安量は、70~75mgで、納豆1パックまたは豆腐半丁で50mgなので食事に少しプラスするだけで補えてしまいます。
ホルモンバランスを整えて女性を楽しむ
女性ホルモンは女性の健康に大きく関わるものですが、とてもデリケートで乱れやすいものです。ホルモンバランスが整うことで、体調面だけでなく心も安定して、より女性として魅力的になることができます。周期に合わせた自分なりの対処パターンをいくつか持っておくだけで、バランスは取りやすくなります。
改善法は普段の生活に少しプラスするだけで充分ですので、無理なくゆるやかに整えて、心も身体もすこやかないきいきとした毎日をすごしましょう。